あくとる

クイーン&スリムのあくとるのレビュー・感想・評価

クイーン&スリム(2019年製作の映画)
4.0
"存在の証明"

サントラのメンツが魅力的だったので、ずいぶん前に購入し、公開を心待ちにしていた作品。
残念ながら劇場公開はされず。

差別的な白人警官を撃ってしまったことで始まる黒人男女の逃走劇。
いつしか彼らの存在はアメリカ中に知れ渡り、"抗議の象徴"となっていく。
黒人が白人警官によって殺されている現実と照らし合わせて観ざるを得ない。

上質で豊かなドラマ。
出会ったばかりの二人が逃走のなかでお互いを開示することで、仲を深めていく様が自然で良い。
彼らが出会う様々な人々も興味深く、考えや選択も心に響く。
逃走のなかで束の間の自由、解放感を得たかのような、車から体を乗り出すシーンが印象的。

各場面を彩る音楽もとても重要な要素。
Bilalに始まり、Vince StaplesやBlood Orange、まさかのLauryn Hillに、さらにはRoy Ayersまで、錚々たるメンツが名を連ねる。
年代やジャンルを問わず選曲されているが、不思議と統一感のあるブラックミュージックのセンスも抜群。
サントラを聞き直したくなった。