この世界には平穏な日常を送ることができる人々がいる一方で、何処かには地獄が存在し、同じ時が流れている。
そしてその地獄は我が家のすぐ隣にあるのかもしれない。
問題はどんなに酷い地獄であっても無関心な物は目に入らないという人間の恐ろしさ。
真っ黒な画面に不協和音が、映写機の不具合かと思うほど長く続くオープニングからして普通じゃない映画であり、画にも音にも実験的アプローチが溢れている。
アウシュビッツ収容所の隣に住むドイツ人家族の生活にピントをあて、この映画における収容所の存在は漏れ聞こえてくる環境音程度にすることで、観客の最悪の想像を促し、かえってその異常性や恐怖が高まる。
決して惨劇を直接的には描かないが、たしかにそこには存在している。
観終わって同じ人間なのにどうしてという虚しい思いに行き着く。
