黒人と白人ポリスという接点で起きる事件はもう定番になっていて、これ自体が印象操作じゃないのかと思われる、と書くと非難されるかもしれぬが、観終わってどうしてもその思いが拭えない。抗議の体裁を取りつつも、実際には道中のエピソードと風景をムードたっぷりに見せる雰囲気映画になっているからだ。それはそれで見どころはあるのだが、それを成立させるための発端が拙(まず)い。そもそもスマホで出会ったのなら、あの状況をライブで撮るのが常識だろう、職質にポリス一人というのもオカシイし、逃亡中も敢えてひっ迫感も感じさせないような流れになっているのも気にかかる。息抜きが多すぎるのだ、意識的に悲劇の英雄にするためのストーリーに見えなくもない。人種差別という美味しいテーマで、いっちょう映画撮ってみるか、みたいな感覚が、この国にはあるような気がしてならない。