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ガリーボーイのトレバーのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.5
HIPHOP好きは観なければいけません。
マジ必見。ガチです。

インドでのHIPHOP事情がまさかこんな事になってるなんて。
インドの音楽で想像出来る感じでは全く無い、
ライムもフロウも本気本気。トラックもカッコいいし。
あ、ライムは歌詞、フロウは節回し、トラックはバックの曲ねw

ストーリーは結構ベタな夢を掴むぜ!物なんだけど、
舞台がインドというだけでゲットー感がまるで違うというか。

主人公ムラドは、貧乏の極みなスラム暮らしながら大学に通っている。
そんな暮らしから抜け出したい親の期待からだが、
彼は身分や貧富の差等インド社会に怒りを持っていた。

知らなかったんだけどインドのスラム街って
観光地化してるんだよね。
旅行客が普通にヅカヅカと家に入ってくる。
で、小銭をもらうというね、、、。これ中々キツい。
で、入ってきたおそらくアメリカ人がNASのTシャツ着てて
あ、NASってアメリカのヒップホップアーティストで、
本作のプロデューサーとしても関わってる。
主人公がNASの曲の一節をラップするのね。完璧に。
するとそいつは、へーすごいね的な反応しかしなくて。
つまり、ファッション的にしか知らないんだよね。
ここで、まず主人公がHIPHOPを本気で好きだとわかる。

主人公には幼馴染の彼女がいるんだけど、
この子がエキセントリックで最高!
主人公がちょっと女の子にちょっかい出されたら
その女の子をブン殴りに行くくらいのやばさw
可愛いし医学生のお嬢様、スラム暮らしの主人公と、こっそりずっと付き合ってる。
朝、バスに乗り合って後ろの席にそ知らぬ顔して座って、
2人でひとつのイヤホン使っておそらくHIPHOP
聴きながら登校するのが微笑ましい。

2人して学園祭かな?のライブを観ていたら
すげーラップをかまして会場をロックする奴を目撃。
彼女がくれたタブレット(無くした!って、甘々なパパに嘘つくのが可愛い)で検索すると
サイファー(仲間で集まってラップし合う事ね)
をしてると知り、見に行くとラップしてみろよ、
自分の言葉で!と煽られ、初めて人前でムラドは
いつも書き留めていた言葉をラップする。
まだライミングもフロウも拙かったけど、
魂のこもった言葉はその場の連中に刺さった。
すっかり、キッカケになった男MCシェールと意気投合、
彼も幼い弟達やダメな親を抱え苦悩している若者だった。

シェールからラップや動きの指導を受け、
レコーディング、ネットにアップするって流れは
最近の音楽物映画の王道展開。
サイファーでのMCバトルにチャレンジして、バトルって
お互いの出身やルックスなどをなじり合うんだけど
ボロクソ言われてガチ凹みするムラドが可愛いw
バトルはあくまでその場での言い合い、気にしない事!w

バークレー音楽院帰りのお嬢様トラックメイカーとの出会い
(と浮気w)があったりして曲も良くなり
ムラドは一躍インドのHIPHOPシーンで注目の的になっていく。
ガリーボーイ。路地裏の少年と名乗ったムラドは
来印する事になったNASと同じステージに立てて
莫大な賞金の出るコンテストに出場する。

HIPHOPが大好きで、日々の怒りを書き留めてはいたけど
ステージはおろかラップを作った事もなかった貧乏大学生が、
何十万人ものいいねをゲットするアーティストにまで成長していく。
何も持たない者が、自分の言葉、声だけを
武器に戦えるのがHIPHOP。

実話を基にしたストーリーに、現代のインド社会や
宗教問題も当然あり。
監督が女性だからか、これからの強く生きるインド女性を示唆している描写も。
ムラドが、HIPHOPで生きていきたいけど
将来の不安も当然持っているわけで。
そこを彼女が、私が開業医になるから大丈夫!って言う所があって。
これは今までのインド社会では考えられない事でしょう。

ムラドの父親は貧乏だけど第二夫人まで迎え、
ムラドやムラドの母親に手を上げる!
男尊女卑で古い考えの父親からムラドは母親と
弟を連れ出す。
HIPHOPに賭ける息子を罵倒し、現実を見ろ
夢など見るな!と言う父親にムラドは、
オレは何十万人もの人達に聴かれているんだ!
夢なんかじゃない!と父親をなじる。
傲慢な父親だけど、哀れに見えるシーンではありました。

ムラドの悪友が最高で。
車を盗んだり子供にアヘンを売らせたりして
ムラドは怒るんだけど、それはスラムで親が無く
暮らす子供達を救うためだったり、ムラドを
助けるために車を盗んで罪は全部自分で被り
夢をムラドに託したり、ワルではあるけど
熱い奴なんだよね、、、。泣けた。

そんなベタなエピソードを織り交ぜつつ、
ガチなインドのHIPHOPナンバーに乗せて
(ちょびっとインド風味なのがまたカッコいい!日本のHIPHOP同様、ちゃんと自分のモノにしてる)
2時間半があっという間でした!

途中でムラドが自分の曲のPVを撮るんだけど
インド映画恒例な集団ダンスがチラッと出たり、
ラストでスターになったムラドがスラムに帰ってくるシーンに
ベタなインド風味な歌がかかり、故郷に錦を飾るみたいなノリが
やはりインド映画ってお約束は入れないといけないのかなあって
ちょっと苦笑いでしたが
そういうとこも含めて、最高でしたよ!
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