ラッパーってカッコイイんだ!
ラップはカッコイイ!!
ラップバトルがカッコイイ!!!
と思わされたので面白かったです。
人生を映画にするんじゃない。人生は辛くて仕方ない。尺の長さは真綿で首を絞めるよう、高揚感を上げ下げ繰り返して痛めつける単調とも言えるドラマ構成、人生ってそうなんだけど疲れる。疲れた、疲れたが、ちゃんと映画であった事に気付かせるクライマックスで心底安心した。しかし、酸いも甘いも全部を描写していたら長くなるに決まってるし、切り分ける事が出来なかったのが本当に難点。
こいつは『ジョーカー』になるしかない、もうジョーカーしかないんだ、もうドン底なんだと、お前の人生はここまでなんだと打ちのめすが、よくよく考えると生身の彼女が居るから絶対にジョーカーにはならないのよね主人公。最後は『ロッキー』で良かったよね。
自分の生まれ育ったスラム街でPVを撮ると、インド映画十八番のミュージカルの手癖が出てくるんだが、自分の生まれと育ちが全部味方になり歌い上げてダンスをする様子はカタルシスを感じる。ステージを変えてもオリジンがスラムにある事を示す、スラムを背負った演出が施されて大変上手かった。
YouTubeにMVを動画投稿して成功していくんだが、その成功した動画のコメント欄を父親に見せつけて、この動画を見てくれた人は救われたんだ、だから「俺には価値がある」と証明してみせるとか、たとえ「俺が死んでも動画は残る」とか、動画共有サイト世代、誰でも動画投稿が出来る時代には突き刺さる台詞の塊だった。
白眉だったのが、痴情のもつれで生じる突発的な暴力描写が凄い。縫製工場に乗り込んでからの乱闘とか、過剰すぎて面白い。瓶は言わずもがな素晴らしくショッキング。女性側の嫉妬が爆発し過ぎて作品の倫理観がグラつく。
年明けする瞬間に孤独である様子を切り取ってみせた、車の中でひとりぼっちのショットが良かった。本当に良かった
本作と同日に観た『空の青さを知る人よ』は生まれ育った環境は閉塞感ただよう田舎で、本作は自分の生まれ育った環境を全部一身に背負ってMVを作ってノシ上がる映画だった、両作は対照的だった。人口密集度も全然違ったなホント。
本作が完全克服した燻った気持ちが充満していたのが『空の青さを知る人よ』だったので、同日観たせいで頭がバグった。
『ガリーボーイ』と『空の青さを知る人』両作ともに冒頭の方で、イヤホンを付けて外界の音をシャットダウンする行為をするんですよ。いま自分が置かれてる環境から耳だけは保護したい気持ち。