しちれゆ

最初の晩餐のしちれゆのレビュー・感想・評価

最初の晩餐(2019年製作の映画)
3.6
永瀬正敏・斉藤由貴演じる東家の夫婦の互いを大切にする心。他人に優しくすることは誰にだって出来る。相手は少しだけ自分の人生に関わってはまた消えていくから。自分を侵してこないから。一番近しい人間にどれだけ節度を持って接し相手を尊重出来るかで人の真価は問えると思う。その意味ではこの2人はとても素敵で、そんな親たちを見て育った子供たちもきっと穏やかな家庭を築くに違いない。
毎日毎日家族のためにご飯を作るお母さん斉藤由貴。今どきのお母さんの「つまんない家事育児何で私だけ」という声高な権利主張もなく夫と子どもを愛し日々の生活を慈しむ、そんな女は古いのかもしれない。でもその優しさの元は罪悪感だけだとは思えない。今までの人生を捨てる勇気や、他人の子供の生活に有無を言わせず押し入って行く決意や、それが招いた悲劇や、それらを一切合切引き受ける強い気持ちが再び家族を結びつけたのだ。
凛太郎の「家族というものがようわからん。家族って何か教えてくれよ」という切実な心情も美也子の鬱積する思いも″同じものを食べて生きていく″ことで柔らかくほぐされて日々の命の更新へと繋がっていくだろう。家族を、ひいては人を結びつける″食卓″を私たちは大切にしていきたいね。
しちれゆ

しちれゆ