このレビューはネタバレを含みます
円熟俳優の演技力で魅せるシックで静かなコンゲーム
イアン・マッケランとヘレン・ミレンの大御所俳優が共演したサスペンス・スリラー映画です。
後半のどんでん返しが魅力の作品ですが、伏線が上手く機能していないやや強引な展開は賛否分かれそうです。
歳を感じさせない悪質な詐欺師のロイが純粋無垢なベティの出会いでどう変わるのかという話を想像しますが、そんなドラマに寄った話ではなく単純に復讐の物語です。
この復讐話が厄介でラストで引っくり返す事を念頭に置いてるためかロイとベティのやり取りが意味のない物になっている。
ロイは騙す側、ベティは騙される側のドラマが成り立っていないのです。これは最初から誰が勝つか決まってるゲームなのだから。
また、このベティの復讐方法がかなり行き当たりばったりで脚本のご都合を感じます。
ベティはなぜこんなに歳になってから復讐しようと思ったのか？
いつからロイの事に気付いたのか？
中盤で明かされる入れ替わりもピストルで額を撃ったらショットガンで撃ったのかレベルで顔面が吹き飛ぶのも違和感しか感じません。
息子の彼氏のリサーチャーを使って用意周到に計画したのに、ベルリンの生家にはロイと出会った後に行きます。
もし、証拠が無かったらどうするつもりだったのか？
証拠がある確信があるなら事前に用意するのが普通です。
この辺りの取って付けたような伏線描写がミステリーとしてガタガタで後から見返すとツッコミ所満載なのが残念な部分です。
ベティの復讐の理由は非常に重く、ロイのクズ人間ぶりは最後まで変わらないのでカタルシスはあるが、煮えきらない感情が残ります。
前半のドラマ部分をもう少し生かしたどんでん返しならさらに面白くなったと個人的には感じました。
