イマジンカイザー

アルプススタンドのはしの方のイマジンカイザーのレビュー・感想・評価

4.4
高校演劇が原作、ってところも含め、そうした題材の延長線上にあった『カメラを止めるな!』に匹敵する会話劇映画の快作。
主人公たち同様さほど興味もない野球に、そもそもカメラがそちらに向かないのに、ラスト周辺では熱が上がって応援したくなる気持ちの運び方が大変丁寧。

それぞれ何処かぎこちない会話を交わしながら、ひょんなところで綻んで、会話のネタが次々進み、いつの間にだか本音で話し合ってる登場人物の配置、会話のネタ、場面転換のタイミングが絶妙のひとこと。

演劇部から観た野球部。優秀な同ポジションからみたドロップアウト組。誰も彼もが努力しても叶わないと、立ったところで意味あるの? と幾度となく『しょうがない』とリフレイン。

けれどそうじゃない。自分たちは『はしの方』の人間だけど、それで塞ぎ込んで斜に構えてたって楽しくないよと突っ込んで来るこの話筋。それぞれがそれぞれのことを微妙に知らないディスコミュニケーションが重なって、最後は顔も見えない野球部のことを応援してしまう青春グラフィティ。
元が演劇なので当然といえば当然なのですが、画になるものも動きなんてものも無いわけだから、その分役者たちの一挙手一投足に熱が入っているというか。どこか冷めた最初のシーンから、徐々にエンジンのかかってくる流れづくりに脱帽です。

総てのお話が終わった終幕近辺、応援に向かうあのシーンで総てがガッツリ繋がって大変気持ちよく見られました。誰が欠けても好転しなかったであろう登場人物の置き方は見習いたい。