ヨウ

フォロウィングのヨウのレビュー・感想・評価

フォロウィング(1998年製作の映画)
4.3
赤の他人の尾行を趣味とする男。ある時窃盗で生計を立てる犯罪者と接触したことをきっかけに自らも盗みの魅力を見出していく。様々な手ほどきを受けるが、物事は次第に奇妙な方向へ進んでゆく。交錯する思惑。張り巡らされた罠。微睡んだ時系列の中、全ての謎が明らかになり、劇的な結末を迎えるのである。見事な映画技法を直で目にし、もう唸るしかなかった。ラストは主人公同様呆然とした。気持ち悪さと清々しさが混合したような不思議な余韻が残る。クロノロジカルなつくりではないために難解さを抱くが、終盤に向かうにつれて生ずる怒涛の伏線回収は衝撃だった。これは一度頭を整理してからすぐにでももう一回観たい。そう思わせるほどに面白かった。70分という短い時間でモノクロフィルムを用いてここまで素晴らしい仕上がりになるとは畏敬の念すら覚える。クリストファーノーランの天才ぶりはこの処女作の時点ですでに遺憾なく発揮されていたのである。次作以降の布石であったことに間違いない。ノーランファンは原点回帰という意味で今作を観るべし。
ヨウ

ヨウ