くろすけ

サヨナラまでの30分のくろすけのレビュー・感想・評価

サヨナラまでの30分(2020年製作の映画)
5.0
ずっと見たかった映画をやっと見れました。

すんごいよかった。こんなに素敵な映画だったとは。

まっけんにこういうちょいチャラわんこ系の男の子をやらせたらピカイチですよね。
うまくいかなかったらいくまでやるんだよ、という何でもこじ開けるハイパーポジティブまっけんよい。

人と関わらないようにしていた颯太くんがアキくんきっかけでバンドの人やカナちゃんの影響で人と音楽をやる楽しさに目覚めたり、カナちゃんに惹かれたりしていった。
アキくんに永遠に体を貸しますよ、と言いながらアキくんの立場を羨ましくなってしまうところ、本当に何でもこじ開けるアキくんはすごい。


自分がいなくても回っていくバンドを見つめるアキくんつらい。
俺がいないと何もできないくせに。
そうであってほしいという願望を持ちながら、颯太くんに変わってと頼まなければ存在ができない。

その苛立ちを颯太くんにぶつけかけるのに、聞き返されたら「誰かとうまくやるっていいだろ?」って言い換えるところ、アキくん…。好きです…。

「大事な人も大事なことも消えたりしない。」

アキくんも颯太くんも互いに互いが羨ましくてしょうがなくなってしまう。

「いつまでも引きずってだってしょうがないだろ。」
それは今を生きている人がこれからも生きていくために必要な覚悟だけど、あくまで生きている人間の理屈。
死んでいる人間としてはどうなのかと考えてしまった。
記憶の上書き。思い出の上書き。
本来亡くなった人が見ることのない、置いていかれた人の悲しみと立ち直っていく過程を目の当たりにするアキくんがしんどい。
しんどいのにこうかくがあがるのアキくんがきちい。
よく死んだやつには勝てないというけれど、死んだ人だって生きてる人に勝てないんだと痛感してしまう。
そしてどんどん『上書き』されていくのを目の当たりにする辛さ。
取り残されたように映されるまっけんの後ろ姿が印象的。
体育座りのまっけん…ベリーキュート。


必要としているのはお前だよ。
あなたが消えてしまうんですよ。それでいいんですか?

このアキくんと颯太くんのやりとり、長回しがすごい。ここもしかしてずっと?すごいな。
僕はあなたを上書きしたくない。
アキくんの存在を消したくないとも聞こえるし、アキくんの代わりとしていたくないとも聞こえる。

最後のライブシーン、美しかった。
ライブ前、颯太くんとアキくんはそれぞれ相手とバンドメンバーのことしか考えていないのよね。
これまで迷って衝突したけど、大事な局面では相手のことを優先してくれるの、善性が胸に痛い。
自分が消えるってわかってて前に進むのかアキくん。
あんなふうに笑うの…最後かもしれないのに。

めっちゃいい映画だった…。
アキくんと颯太くんの視点のスイッチのカメラワークや北村くんのアキとしての歌声と颯太としての歌い分けがすごい。
北村くんの演じ分けの凄まじさ。
スイッチが切り替わるように変わるのすごい。
そしてまっけんの表情の良さに打ちのめされてしまった。
あの歌がお二人とうまく、バンドの歌としても劇中歌としても素晴らしかった。
最後の真昼の星座の演出最高だった。
見終わったら速攻でサントラを買いに走ってしまった。
くろすけ

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