建野友保

ソワレの建野友保のレビュー・感想・評価

ソワレ(2020年製作の映画)
4.4
何度も後味を反芻しながら味わえる邦画と出会えて、とても幸せ。人生の伴走者、共犯者を描いたという点では「生きてるだけで、愛。」とも通底するテーマをもった作品でした。添い・添われ、の「添われ」でもあるのかな、というのは帰宅してから気づいたことですが。
彼らは自分の人生から明らかに逃げ出している。しかも全く勝算のない逃避行です。でも、逃げてはいるけれど、捨ててはいないんですよね。むしろ、逃げながら人生を拾い集めている。広い集め直している、と言った方が良いかもしれない。
ラストシーンは実はよく分かりませんでした。それが悔しくて悔しくて、帰りの電車の中で頭をぐるぐる。「周りをようく見てごらん。一人で苦しみを抱え込んで藻搔いている同志がいる、かもね」。僕は作り手から、そんなメッセージを受け止めたのですが…。
主演のお二人がとても良かった。印象的なのはベッドシーン。自分の身体に染み付いた辛さに絶望して顔を覆うタカラと、それを察する翔太。いやあもう、たまらんです。心の中を映し出した「影」の演出も良かったです。とても満足でした。
建野友保

建野友保