ShinMakita

SEOBOK/ソボクのShinMakitaのレビュー・感想・評価

SEOBOK/ソボク(2021年製作の映画)
1.3
韓国…前政権が発足させたiPS細胞研究を牽引するソイングループ研究所で、人類初の「不老不死クローン人間」が誕生した。名は〈ソボク〉。その脊髄液を用いれば、どんな病も治癒できる可能性があるらしい。ある日、研究所長がテロで爆死する事件が発生、韓国情報局はソボクを安全なシェルターに移送することを決定する。その護送任務を仰せつかったのは、元情報局員ミン・ギホン。脳腫瘍を患い余命1年と宣告された男だった。ソボクの脊髄液治療の被験者になる予定のギホンなら、護衛役にうってつけである。ソボクの死が即自分の死となるから、なんとしてでも守り抜くだろう。しかしギホンの上司アン部長には別の思惑があった。部長はアメリカと結託し、ソボクが世間に知られる前に処分しようと考えていたのだ。そこで護送途中にアメリカ側に引き渡す段取りを組んだアン部長だったが、謎の武装集団が護送団を襲撃、ソボクを拉致してしまった。一緒に囚われたギホンは、何とかソボクを連れて脱出しようと試みるが…


「SEOBOK/ソボク」


以下、君か、ネタバレか。

➖➖➖


韓国映画びいきの俺ですが、本作についてはちょっと低評価。SFとしてのロジックがかなりテキトー(字幕の問題かもしれないけど)、逃走劇のテンポが悪い(危地を脱しても誰も追ってこない)、思惑が複雑すぎて、一体何をしたいのかよく解らない…の3本柱です。

不老不死ネタといえば、ちょうど「アーク」も公開しているので見比べるのも一興。アークも科学考証はテキトーだけど、少なくとも不老不死に対する哲学的な問いと答えについてはちゃんと描いていたなと。ソボクについては「不老不死技術なんか持ったら人間はダメになる。だからソボクは廃棄」という一方的なアメリカの思惑しか描かれていませんよね。そこがSFとしては物足りないところ。

ソボクの超能力が見せるスペクタクルシーンは確かに凄いけど、アクションサスペンスとしては緊張感に欠ける出来。傭兵たちのアジトを脱してあんなバカでかいトレーラーで逃げているのに全く追っ手がくる気配なし。海岸で意識失っている間も、ぜんぜん追っ手がくる気配なし。サスペンスとしても物足りないんですよね。

キャラが何をしたいのかよく解らない、というのはアン部長に集約されます。護送中にアメリカに引き渡すつもりなのは解るけど、なぜギホンを護衛に選んだの?病気持ちで脅威にならないと思ったから?テロを恐れているならハンデのない局員を使うだろうし、恐れていないならそもそも護衛は不要でしょ。被験者(ついでに護衛官)という意味合いなのかな。その人選がハクソン博士の「移送の条件」だったのか。
さらに不可解なのは、車椅子の会長さん。ソボクがアメリカに引き渡されるのを阻止するため傭兵を送り込むんだけど、ちょっと待て。アメリカがソボクの身柄を欲しがったのは、研究所長が爆死して、ソボクの存在が明るみになる恐れがあったからだよね? で、その研究所長を爆死させたのは誰かというと…あんた、会長さんだよね。
…ま、確かに所長はリークしていたから遅かれ早かれアメリカが出張ってくるんだろうけど、事態がこじれたのは明らかに会長の自業自得。所長を密かに監禁するとかして、その間にソボクの脊髄液で自分の病気を治せば良かったんじゃない?それなら無駄に人が死ななかったのに。

…ごちゃごちゃクサしたけど、ソボク役のパク・ボゴム、ギホン役のコン・ユが魅力的だから、観る価値がないとは言わないです。イ・ヨンジェ監督、ミニマルなヒューマンドラマなら上手いんでしょう。しかし本作はちょっと手に余ったのではないかな。「建築学概論」はすごく良かったんだがなぁ……
ShinMakita

ShinMakita