HarryT

アメリカン・ファクトリーのHarryTのレビュー・感想・評価

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)
4.1
 複雑な気持ちで見終えました。

 ここで取り上げられている組合は、UAWですね。海外の企業がアメリカに進出する時には、いつも問題になります。アイリッシュマンにジミー・ホッフアが出てきますが、有名な組合指導者で、マフィアとも深く関わっていました。
 
 ビッグ3と呼ばれて、未来永劫栄えていくと思われていたGM、フォード、クライスラーが、日本やドイツの会社に抜かれて行った時、その原因の一つにこの組合の強さが挙げられていました。よくできているシステムなんですが、それは、他国との競争は、考えられていない。
 出来るだけ、心地よく、差別なく暮らしていくためのシステムでした。ビッグ3の給料は、工場労働者にとって、大変高いものでした。この、差別の少ないというのは、この国では大変重要なことです。これは、大きな成果です。
 ただ、自発的に中から改善をすることには向いていなかった。敗戦国の企業に負けるなんて夢にも思っていなかった。前に進むシステムではなく、うまく維持していくシステムです。

 日本も、韓国や中国、台湾の企業に負けるなんて考えていませんでしたから、同じですね。日立や東芝、松下、ソニーの家電がずっとトップを走ると思っていました。

 アメリカ人にとって、この会社の画一的で上意下達型の経営は、人の本質を損ねると見ています。背も低い、英語も下手な、貧弱な人たちに支配されるのは、かなり屈辱的なんだと思います。仕方がないから言うことを聞いている。このオーナーも、外見と英語力ですごく損をしています。

 これから、何が正解で、どのように進んでいくかを思い、最初に書いたように、複雑な気持ちで見終えました。見応えは十分ありました。
HarryT

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