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オペラ座の怪人のyutaのレビュー・感想・評価

オペラ座の怪人(2004年製作の映画)
5.0
オールタイムベストに入る映画は観ている最中、強烈に惹きつけてくるものを感じるが、今作はまさにそうだった。
オープニングから一気に惹きつけられた。1919年にオークション会場となっていた廃墟の劇場が、シャンデリアの点灯と共に、1870年代の絢爛な劇場へと変わる様を、白黒からカラーへの演出で魅せるオープニングは今までに観た映画のオープニング史上屈指の素晴らしさ。
内容も素晴らしいのだが、何より映像としての芸術性が高い。劇場内やファントムの住処等の場所から、登場人物の衣装や、パフォーマンスまで視覚的な美しさのレベルが別格。
人々を魅了する豪華絢爛なオペラ座の裏で、自身の孤独や醜さに苛まれる人間というファントムのギャップ、各シーンによって至高のオペラを描く芸術家,不遇な生まれを持つ哀れな男,一途な愛を煮えたぎらせる情熱的な男と受ける印象が全く違う多面性がファントムをより魅力的な登場人物にしている。
外見の醜さは内面の醜さでもあるのかという話ではない思う。外見の醜さ故に、自らが持つ至高の芸術を生み出す感性や一途で強い愛が歪められ、自分の思い描く美しさを完璧に表現し追求し、妥協は許さないという、美しさや完璧さへの執着に変わってしまったのだと解釈したい。
ファントムがクリスティーヌに送る黒リボン付きの薔薇はファントムがクリスティーヌに対して抱く愛情の象徴で美しかった。冷たい地面に捨てられ、粉々になったとしても、最後まで美しい形で鮮やかな色彩を持つ薔薇としてクリスティーヌの元へ贈られ続け、ファントムのクリスティーヌへの不変の愛を感じて最高に痺れる演出。
ラウルの最後の行動もクリスティーヌへの愛とファントムへのリスペクトを感じるもので、最初から最後まで全てが完璧。
メインを張ったジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソンのパフォーマンス力の高さに脱帽。
内容、演出、パフォーマンス、どれを取っても素晴らしく傑作であることを確信している。
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