夢を追いかけるということは、希望や野心だけで突き進めるほど簡単なことじゃない。
「周りに比べて自分は何も成せていない」「学生の頃の自分は誰よりもその夢の分野において優れていたし、絶対いつかは自分のことを認めてくれる」
誰もが、何かを、追いかけていたことがある。
その時ずっと付き纏う"劣等感"。
それに押しつぶされないように、何かに縋りたくなる。
永田にとってそれは沙希で、沙希にとってもそれは永田だったのだろう。
お互いがお互いの傷を舐め合おうとして、でも相手のことを想えるほど自分に余裕がなくて、とても誰かと付き合える精神ではなかった。
付き合うって何だろう。
思えば自分にもこんな泥沼にハマったことがあった。
でもきっと、自分の人生は自分の人生で、誰かに助けてもらおう、支えてもらおうと思うのが違うんだよな。
そして、誰かを支えようとするのも違うんだろうな。
自分が相手にできることは、梨をあげることだけ。
でも、その梨を食べないのなら、ちゃんと叱ってあげられるのが相手を尊重すること、なのかな…なんて思う。