芥川賞受賞作『火花』に続く又吉直樹の小説の映画化。売れない劇作家の男と、女優を志し上京してきた女が恋に落ちる話。原作は序盤だけちらっと読んだことがある。
いや〜!めちゃくちゃ面白かった。主演ふたりの力強いパフォーマンスと、行定勲のバッチバチに決まった演出が、見事にクセのある又吉ワールドを創り出していた。そこに本当に永田と紗希がいるみたいなリアリティがあった。
そもそも自分は松岡茉優が出演している作品は全部好きになる魔法にかかっている。本作も松岡茉優が輝きまくっていたし、もはや彼女にしか務まらない役だったと思う。松岡茉優そのものが紗希なのだと錯覚してしまうほど自然体に感じた。
山崎賢人はと言うと、よくここまで又吉が生み出した難しいキャラクターを自分のものに出来たな〜!と関心はしたのだけれど、どれだけ演技が上手い人でもやっぱり関西弁のイントネーションは違和感があるなぁと思ってしまった。間違いなく山崎賢人は適役だったと思うけど、そこだけは気になって仕方なかった。エセ関西弁が気になるのは関西人の性なので許してほしい…。
物語は(もし原作に忠実なのだとしたら)非常に又吉らしくて良かった。感情に従順な人間を恐怖の対象として見ていた主人公こそが、最も自分の感情に従順だったという落語のようなオチが、これぞお笑い芸人の作品だなぁ〜と涙腺をグリグリされながらも笑みがこぼれおちた。絶対に原作を最後まで読もうと心に誓った。