Lugh

劇場のLughのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
3.8
演劇に限らず、音楽や文芸、創作・アート全てにおいて、現実との乖離が生じて(むしろその乖離こそが価値を生むことも多いのだが)、創作者側は時に“夢現”となり、実社会とそぐわない状況に陥ることもある。

“夢現”は、アスリートにおける“ゾーン”とは異なる。
無意識的に没入する“ゾーン”とは違い、創作者は意識的に“夢現”を作り上げる。そこにはある種の逃げの姿勢もある。
そして双方、同様に居心地の良さがある。
前者には自然に終わりが訪れる。しかし後者には、それがない。
意識的だからこそ、そこから離れられない。


この作品は、終盤に“夢現”が上手く表現されたと思う。
あの部屋の壁が倒れ、劇場の舞台となったあの瞬間。
とても素晴らしい瞬間だった。


行定勲監督の確かな手腕を感じるシーンだと思う。
Lugh

Lugh