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劇場のmahoのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
3.6
才能って残酷で無情だなあ、夢追い人ってかっこよくて厄介だなあ…
というのが一番の感想。そして主演のお二人の、役者としての才能が迸っていて本当にすごい…特に松岡茉優さん演じる沙希ちゃんがあまりに可愛くて、魅力的すぎました。

序盤は正直、2人のだめ男、だめ女っぷりにいらいらしちゃって見るのやめようかと思ったけど笑、ラストの畳み掛けるような「エモい」場面の連続に心掴まれましたね…行定監督流石です…見てよかった。。

誰に感情移入するのかによって、いろんな見え方をする作品なのかな。
私は恋愛のほうより、才能をめぐる人間ドラマとしてみてしまいました。評価されていないことを知りながら、盲目的に自分の才能を信じる永田。そして、いつも全肯定してくれる沙希ちゃんの優しさにすがって、自分の夢が叶って彼女も幸せになる未来を信じて疑わない。

才能って、やっぱり努力だけではどうにもならないものがあって、
多くの夢追い人は、どこかで見切りをつけて、落ち着くところを見つけて、すぐ近くにある普通の幸せを優先せざるを得なくなることがほとんどなんだろうと思う。自分も、大人になるにつれて、そういう妥協の仕方をたくさん覚えてきたなあって。

ただ、それができない永田と、一緒に夢を追ってしまった沙希ちゃんのような2人も、きっと世の中にたくさんいる。どっちが幸せかなんて決められないけど。そんな世界は残酷だなあって、胸が苦しくなる。

「ここが一番、安全な場所だよ」
依存し合って、そんな冷たい世界から目を背けて、身を守ろうとする2人が印象的でした。

「どこにでもいる普通の女の子」を演じ切る松岡茉優さん、本当にすごい。雑踏のどこかに、ながくんはすごい!!って明るく儚く笑う沙希ちゃんを探しちゃいそうな、、語彙力が足りないです…本当に魅力的でした。

お面をかぶって沙希ちゃんを笑かす永田、2人がそれぞれに夢を信じ切れなくなって、表情を変えながらすれ違っていくくだり、アイドルの映像を見ながら並んで話した部屋、家を出て行く前の2人芝居、ラストシーン……お気に入りの場面がたくさんあります。

あと、沙希ちゃんが切ってくれた梨がかわいそうだったので、私はこれから自分で切って、乾かないうちに食べてあげようって決めてます、、
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