すあまさえ

劇場のすあまさえのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.5

DVDが出たら買うんじゃないかな。

紗希の細かい気持ちに、もの凄く共感を感じる。

夢を追いかけていたけど、それを誰かに託して応援する。自分は評価される身から解放され、どこか安心している。これからはこの人を応援すること、そして支える事が私の使命なんだと感じる。
まだ人間になりきれていない、どこかが欠けて壊れており宇宙人のような永田を、この世界で普通に暮らせるように面倒をみて、ケアをする。
まだ若い紗希にはその日々が輝いていて、苦でも何でもなく、むしろ、もっと永田の奇妙な部分を求めてさえもいる。

彼の些細な成長や世間からの高評価が誰よりもうれしい。
他のみんなはまだ気がついていないけれど、私だけがこの才能を知っている。そして、本人よりもずっと信じている。

世間からみれば、紗希みたいなしっかり物で優しくて可愛い子が、なんで永田なんかと付き合っているんだろう、と思うのが普通だろうけど、全くそうじゃない。
実は、助けられているのは圧倒的に紗希の方だ。

あなたと付き合ってから世界が動き出して、色鮮やかになった。

若さは恐ろしい。そして強い。

もうあんな付き合い方はできない。
でも、本当に楽しかった。

27歳、世間からの目は厳しい。それに耐えられるだけの、永田の成長はなく、希望は見られない。
お金がなくても良かった。どこに遊びに行けなくてもよかった。プレゼントが安いものだってほんとに嬉しかった。

普通ってなんだろうと考える。
普通のカップルの幸せ。でも、永田との時間はどのカップルよりも幸せな時間だ。普通じゃもう熱狂できない紗希がいる。

永田を人間にした代わりに壊れた紗希は、自分の時間にゆとりがない事に気がつく。そろそろ、もう、もたない。

店長の家まで連れ戻しにくるシーン。
自転車の後ろで、なんでもっと早くその言葉を言ってくれなかったの、と泣く。
大雨の夜に駆けつけて来てくれるシーン。
怒って欲しかったんじゃない、ただ抱きしめて頭を撫でて一緒に寝て欲しかったの。

別れよう。
この人を一生忘れることは出来ない。
別れても、ずっとずっと気になるし、思い出すだろう。けど、もう一緒には入れない。

最後、永田の舞台をみる紗希。
でもね、あれで紗希は前に進めると思うんです。

2人が、すぐじゃなくていい。でも人生のどこかで、もう一度、すれ違って欲しい。
すあまさえ

すあまさえ