あやな

42ndストリートのあやなのレビュー・感想・評価

42ndストリート(2019年製作の映画)
3.5
この手の海外の舞台の映像化にしては、珍しくハマらなかった……。
ひとえに作品の出来が悪い。
ミュージカルの文化を殺してる。
プロダクションはとてもよかった!特にダンサーたちは素晴らしいパフォーマンスをしていた。
が、そもそもホンが悪い。
その作品への期待は何か?単純明解、バークレイと古き良きバックステージミュージカルの再現を通して「多福の記号」を取り戻す、それだけだ。
それが蓋を開けてみたら、ミュージカルのお決まりを守ることもせず、ダンスに至っては1シーンバークレイ的な俯瞰を再現しようと鏡を出したに過ぎない。
まず1幕中盤までのミュージカルシーンが微妙にシーンと合ってない。上手くドラマを作ることができていない。流れさえ改良すれば、2幕もいっきにドラマとして映えるだろうに。
ただ、どうあがいても(たとえ脚本を変えても)バークレイの空間性を超えたミュージカルシークエンスを、フラットな視点の舞台で越えることは不可能。
それに対する工夫がまるでなく、ダンサーが多ければなんとかなる、みたいな思考停止が一番酷かった。
映像も諦めに加担してるのが更に悪くて、個を剥奪してまでも徹底的に作られた機能美のバークレイを真っ向から否定する形でダンサーを接写する。
よくミュージカル映画を語るときに、60年代でミュージカルは死んだ、多福の記号は消えた、と言われているのがあまりピンと来なかったけど、皮肉な形でそれを理解することになってしまったのが悲しい。
観た後に包まれるようなあの幸福感をまるで感じることはできなかった。
やっぱり、二度と再現されないという意味で、ミュージカルは死んでいたのだ。
あやな

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