MasaichiYaguchi

トスカーナの幸せレシピのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

トスカーナの幸せレシピ(2018年製作の映画)
3.8
この映画の主要登場人物達は何かしら問題を抱えていて、それと向き合う四苦八苦の日々を送っている。
元三ツ星レストランのシェフのアルトゥーロは一流の腕を持ちながらもカッとし易い性格で傷害事件を起こした為、誰からも相手にして貰えない。
そのアルトゥーロが更生の為の社会奉仕をする自立支援施設「サン・ドナート園」で、アスペルガー症候群の青年グイドと出会い、料理を教える側と習う側という立場を超えて2人は交流していく。
このアスペルガー症候群のグイド役のルイジ・フェデーレが、純粋で傷付き易い青年を感情豊かに、そして繊細に演じていて素晴らしい。
問題を抱えながらも2人には夢がある。
事件で全てを失ったアルトゥーロは再起して店を持ちたいと願い、グイドは世話になっている祖父母から料理人になって自立したいと考えている。
つまり彼らは料理を通して繋がり、自らの料理によって夢を実現させたいと頑張っている。
「料理は愛情」と言われるけれど、それは美味しくなれと念じることでも、好きな人を思い浮かべて調理することでもない。
「美味しく食べて欲しい」という気持ちを愛情だと考えるならば、それには確かな調理技術、食材に対する目、レシピに対する理解が必要になってくる。
グイドは絶体味覚という優れた能力を持ち、それを活かした調理技術をアルトゥーロは教え込んでいく。
そんな2人が挑むのが「若手料理人コンテスト」なのだが、アルトゥーロにも人生を懸けた大きなチャンスが訪れて、夫々正念場を迎えていく。
この作品は料理を通して触れ合い、切磋琢磨する中で絆を築いて再起し、人生に立ち向かっていく人々に温かなエールを送っているように思える。
「フレー、フレー」の代わりの「フルパワー、フルパワー」というエールが心地良い余韻を残します。