音楽が映像を阻害していた。
ノイズミュージックのような、ランダムな不協和音や音割れが不快で、耳が痛く、気が散って映像体験に集中できなかった。
映像自体が「わけのわからないもの」であることへの不満はない。
監督はかつてのインタビューで「容易に理解できないもの」を賛美していたからだ。
曰く、「朝焼けのような、それ自体に意味はないが、そこに美しさを見出せる、自然現象のような映像」を目指していると語っている。
しかし、音楽のせいで、映像の中に美を見出そうとする観客の活動が妨げられてしまうならどうだろう。
本作において、少なくとも自分にとっては、監督の目論見は失敗していた。