あくとる

Mank/マンクのあくとるのレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
4.5
"映画の力"

本作は歴史的名作『市民ケーン』の脚本を書くマンクと映画界を描く。
見始めてしばらくは古き良きハリウッドの映画業界を振り返るばかりでテーマはなかなか見えてこない。
肝となるのは中盤、1934年のカリフォルニア州知事において、ハーストたちが共和党のためにヤラセのニュース映画を作って政治的印象操作を行い、結果共産党が勝利した出来事である。

観客はスクリーンに映るものを信じる。
映画の持つ力とその危険性。
マンクが『市民ケーン』を書き上げた理由はまさにここにある。
そしてフィンチャーもまた『ファイト・クラブ』が意図せずインセルから神格化されてしまうという経験があり、作品がそれ以上の影響力を持ってしまう恐ろしさを知っている。

芸術をどう捉えるかは受け取り手次第。
それでもフィンチャーは創り手がその力と責任を忘れてはいけない、決して悪用してはならないという警鐘を鳴らす。
現代においてメディアによる印象操作はより高度になり、より深刻な問題である。
フィンチャー作品の中では地味に見えるかもしれないが、最も熱いメッセージを持つ作品。

公開当時の駄文はコメントに。