まっつ

ザ・ハントのまっつのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
3.1
ゴア描写に耐えられる人限定にはなるけど「私が正しいに決まってる」という一言に引っかかりを感じる人には是非観てほしい。そして引っかかりを感じる人ほど、どういう立場の人間がこのフレーズを発するかがわかったとき、横っ面を張られた気分になるハズ。というのも本作は「リベラルの欺瞞」を描いた作品だからだ。アメリカの有力右派メディア、トランプ大統領が本作の「リベラルがトランピスト(と思しき人たち)を狩る」という構図を批判し公開延期に持ち込んだ話は有名だが、ここで嘲笑われているのはむしろ狩る側。リベラルの「自分の守りたいものだけを守り、そうでないものは視界の外に追いやって侮蔑する」という欺瞞こそが批評的に描かれてある。

細かいところになるが、個人的に一番黒い笑いが出たのがエイヴァ・デュヴァーネイの出し方。本当に一瞬、チラッと名前を出すだけなんだけどその文脈!『ボクらを見る目』や『13th 憲法修正第13条』の監督がどう槍玉に上げられるかというのも映画/ドラマ好きならチェックしておきたいところ。

いや〜しかし本作の脚本はデイモン・リンデロフ。彼が手掛けた大傑作(2020年に観たドラマで1番好き)HBO版『ウォッチメン』がマイノリティの歩みを苦しみに満ちた筆致で、かつヒロイックに描いた作品なら、『ザ・ハント』その裏側を照らし出している。2作は鏡像関係にあるので、併せて観たいところです。
まっつ

まっつ