Tラモーン

ザ・ハントのTラモーンのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
3.8
(ホラーか微妙なとこですが一応)ホラーチャレンジ第14弾!


森の中で猿轡をされた男女12人が目を覚ます。彼らの前に現れた巨大な木箱を開けると中からは1匹の仔豚と大量の銃。一緒に入っていた鍵で猿轡を外した12人が武器を手に取り困惑していると突然銃声が鳴り響く。集められた12人はセレブたちが娯楽のために人を殺す人間狩(Hunt)のターゲットだった。


めちゃくちゃブラムハウスらしいポップで皮肉で風刺の効いたバイオレンスエンタメという感じで面白かった!

冒頭から金髪のヨガパンツを穿いた女の子(如何にもなブロンドの白人)を主人公と見せかけてあっさり頭を吹っ飛ばしたり、主人公感溢れる好青年(アメリカ映画的なステレオタイプ)を爆散させたり、誰が主人公なのかわからないまま勢いに任せて進むスピード感が気持ちいい。
このスピード感のおかげで、集められたメンバーが状況も飲み込めずに凄惨に殺されていく様が何故だかコミカルに見えてしまうのはブラムハウスの上手さかな。

ガソスタのシーンでこの狩りをやってる奴らが裕福な経済力を持っていて、かなり周到に準備をして本気でハンティングに臨んでいることがチラチラ見えてくる。
それと同時に、集められたターゲットたちがステレオタイプな白人至上主義だったり保守派だったり、銃規制反対派だったり(めちゃくちゃトランプ的)なのが見えてくる。

謎解きが進んでいくとやっぱり明確な「リベラルエリートvsアメリカ的な庶民」という構図が明らかになるんだけど、決してどっちに肩入れする訳でもなく、"二者の分断の溝が深まっていく理由は双方にある"ということをかなり皮肉めいた調子で表現している。
エリート側はレイシズムや海外の人道支援には善意と興味を持っているくせに結局は自国の庶民のことは「自分達の足を引っ張るクズ」としか思っていないし、庶民の側は自分たちが苦しむ原因は全て搾取されているからだとしてフェイクニュースや陰謀論を鵜呑みにして拡散してきた人間ばかり。
そんな両サイドを俯瞰で観せて、どちらの味方もせず"ほらほらアメリカこんな真っ二つになっちゃってるよ笑"って皮肉ってる感じを受けた。とするとクリスタルの人違いって話はあながち嘘じゃないのかな…。

って考えるよりもバイオレンスに次ぐバイオレンスでエンタメ的に楽しみつつ、笑いながら皮肉を受け取るのがこの作品の正しい楽しみ方な気がする。
串刺し→地雷→串刺しは爆笑だったし、助手席ドロップキックからのバックでどーん!はリズム良過ぎて笑った。あと手榴弾パンツ怖かったやろな…。
クリスタルを演じたベティ・ギルピンの無双アクションはもはやジョン・ランボーだったし、最後のヒラリー・スワンクとの一騎打ちは長回しを多用して緊張感を煽りつつ時折2人の会話でコミカルにしてみたりとエンタメ的にめちゃくちゃ楽しい。

あ、でも冒頭と対比になってるラストシーンのキャビアのこと考えるとやっぱりクリスタルは人違いじゃなかったのかな。


めちゃくちゃ考察させる映画な顔をして、実はただただ楽しめる日曜日の夜向けな佳作でした。
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