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ソー:ラブ&サンダーのKEiGOのネタバレレビュー・内容・結末

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

子供は愛なんです。
そこには何の理由も必要なく、ただただ子供は愛されるべきなんです。

Love、その象徴として子供がテーマの本作。
まずA面のLoveはもちろんソーとジェーン。Guns & Rosesの‘Sweet Child O’ Mine’がまたいいですね…。歌というものは聴き手によって捉え方が様々。そこが詩の良いところなんですが、本作に限ってはどうしてもソーとジェーンを重ねてしまいますね!いやぁ、凄く爽やかでロックなメロディとは裏腹切ない歌詞だぜ。中学の頃からお世話になってる対訳くんを引用しておきます[1]。
B面のLoveは子供たち。ここで重要となるのはヴィランであるゴアのストーリーと立ち位置ですね。ゴアはソーに対するヴィランだけではなく、子供を脅かす存在としても描かれています。その様子はまるで『IT』のペニーワイズさながらでした。クリスチャン・ベールが演じたこともあり、“ジョーカー“と評されがちですが、私は“ペニーワイズ“の方がしっくりきますね。『IT』は青少年の心の葛藤と家庭問題を上手に組み合わせており、それが具現化した象徴としてペニーワイズが描かれます。対してジョーカーはもっと、こう、個人のドメスティックな闇を曝け出す印象。だから私は檻に閉じ込められたシーンでペニーワイズを感じました。
Loveちゃん本人に関しては、ラストに二人で砂浜を駆けていくシーンで思わずグッと来てしまいました…。

今回でシリーズの目指す方向がなんとなく分かった気がします。破天荒で遊び人(あれ、地球イチのエンジニアもそうだったような…)な神様ソーとは裏腹、いや、だからこそ彼の作品が最も教育的。引き合いに出す訳じゃありませんが、『エターナルズ』は直接的で、ある種説教臭い部分がありました。でも『ラブ&サンダー』はその臭みが抜けてましたね。嫌味や建前ではなく、本質的にSDGsと向き合っていてとっても良かったです。

パンフレットのタイカ・ワイティティのインタビューもまた良かった!インタビュアーが「ソーを辛い目にあわせすぎだとは感じませんか?」って聞いてるのも最高だし、それに対して「他のキャラクターよりも苦境を経て、倒されてもまだまだ立ち上がれそうな感じがする。だからやり過ぎだとは思いません。」と答えてるのもいい。自分探しに関しても、“戦いの勝利による幸福は一時的な脳内麻薬に過ぎないことに気づいており、だからこそ平和と静寂からトラウマを乗り越えようとする“と仰っていて、もうレビューを書く必要がないくらいまとまってる!(いや、監督兼脚本家なんだからそれはそうなのよ)
しかしこのパンフレットにクリスチャン・ベールが一切写っていないのは彼の事務所から許諾が取れなかったとしか思えない…。クリスチャンがどんな想いでMCUに臨んだのか、きちんとパンフレットに収録してほしかっただけにそこは残念。

さて、MCU全体として大きなヒントと感じたのは2点あります。
1点目は言わずもがなゼウス。ソー以上に強力な神であるゼウスとの戦いがこれから待ち受けていると思うとワクワクが止まらないですね!またエンドクレジットに登場したペルセウスは原作コミックスだとソーの親友だそうで。男性2人で子育てしていく未来があってもいいじゃない。
2点目はヴァルハラ。これまでずっと匂わせてきた死後の世界の存在が明確に描写されました。『シャン・チー』観た時から「怪しいな〜」と思ってたんですよ。「これ、お父さんの幻聴とか、悪魔の誘惑とかじゃなくて、実は本当に呼んでるんじゃないか?」説を推してるので。フェーズ4は『シャン・チー』と『ドクター・ストレンジ』の答えを『ソー』(と『キャプテン・マーベル』『Ms.マーベル』)から裏付けていく構築になっているのではないかと。

海外のレビューまとめ[2]を読んで思いましたが、確かにソーシリーズの中では一番好きな作品になったかも!4作目が一番好きなんて、他の映画見渡してもなかなかないよ?笑 積み重ねを確実に実らせるマーベルスタジオの底力を改めて感じました。


参照
[1] およげ!対訳くん, Sweet Child Of Mine ガンズ・アンド・ローゼズ (Guns N’ Roses), 27 August,2014, http://oyogetaiyakukun.blogspot.com/2014/08/sweet-child-of-mine-guns-n-roses.html
[2] 稲垣貴俊, 『ソー:ラブ&サンダー』海外最速レビュー、シリーズ最高傑作の声 ─ 笑いと感動、悪役クリスチャン・ベールの恐怖, THE RIVER, https://theriver.jp/thor4-early-reaction/
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