KEiGO

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のKEiGOのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

人生を見た。
F・コッポラ、M・スコセッシ、そしてセルジオ・レオーネが描く作品はつくづく人生だと、そう思わされる。”至高の映画体験”がここにあります。この感覚は直近だと『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のレビューでも触れましたかね。脚本としては『ゴッドファーザー』や『アイリッシュマン』に近い。映画として「この尺でなければ描き切れない情緒がある」というレオーネの想いがひしひしと伝わる大作。この満足感が本当に素晴らしいですね、大好きです。

脚本は1968年からの回想として、幼少期に始まり、以降いくつかの時系列を飛び飛びに描いていきます。なので、慣れるまではシーンと人が結びつかなかったり、単純にストーリーを追い切れなかったりと大変なのですが、慣れてしまえばすんなり観れるというか、観れるように"意図的に"そうしているものなの飲み込めます(ここら辺は大河映画に対する慣れも必要かもですが)。
エンリオ・モリコーネの劇伴と作り込まれたセットと衣装が相まって、なんとも表現し難い情緒とノスタルジーがありましたね。

ヌードルスの友情に厚く仕事もこなすが、女心はからっきしなところがまた痺れました。「あぁ、フィクションだな」っていうお伽噺ではなくて、生で手触りのある人情が感じられるのが大河映画の良きところです。青年時代のデボラとのすれ違いによりフラストレーションに駆られてレイプしてしまうシーンも、クライマックスでベイリーと会話を交わすシーンも、中身の善悪は置いておいて、いち芝居としてデ・ニーロの味が十二分に出ていて最高でした。
そのデ・ニーロとタメを張るのがマックス役のジェームズ・ウッズ。彼もギラギラした若者を余すところなく演じていてすごく良かったですね。ヌードルスもマックスも滾っているものの、どこか少し陰があって。そんな男の友情関係も、また渋い。
ここがクライマックスに繋がっていく。ある意味、作品全体がクライマックスのベイリーとの会話までの長い長い伏線とも言えるかもしれません。Roger Ebertのレビューにもある通り、
"When one of them breaks that bond, or thinks he does, he is haunted by guilt until late in his life, when he discovers that he was not the betrayer but the betrayed.[1]"「幼馴染との絆を断ち切ったとき、彼は人生の後半まで罪悪感に悩まされ、最終的に自分が裏切り者ではなく裏切られた人であったことに気づきます。(意訳)」

主題は「友情」と「苦悩」。こう書くと陳腐なものに聞こえますが、人生が織り成す物語がとても重厚で、全くチープなものではない。というかこれをチープと言ってしまったら、人は、人の人生とはなんなのかと…!一人の男が時代を駆け抜けた証であり、それこそ人生じゃないか。素晴らしい。

せっかくGWだし時間と体力があるときじゃないと手が出しづらい作品を観よう!と思い立って正解でした笑



参考
[1] Roger Ebert, "Once Upon a Time in America", Jan 1, 1984, https://www.rogerebert.com/reviews/once-upon-a-time-in-america-1984
・松崎まこと, "映画史に刻まれた、セルジオ・レオーネのモニュメント!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ【完全版】』", 洋画専門チャンネル ザ・シネマ, Jan 17 ,2023, https://www.thecinema.jp/article/1093
・ムービーメーメー, "貴方はどんな感想を。ワンスアポンアタイムインアメリカ", note, Jan 27, 2022, https://note.com/movieme_me_/n/n57bec70e9fc3
KEiGO

KEiGO