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海辺の映画館―キネマの玉手箱のYouKeyのレビュー・感想・評価

4.7
 大林宣彦監督、『権力』によって『なかったこと』として消されゆく存在や歴史の部分をきっちりと押さえてくれてありがとうございました。最初はセルフ・オマージュかいなと笑って観ていたのが、白虎隊と御一新の辺りで『あれ、じゃあ沖縄戦は?』と思ったらバシッときた。

 いわば『検定済教科書』に載らないような日本の歴史を盛りこんだ「アマルコルド」的作品。3時間があっという間に過ぎた。大島渚監督のように激おこプンプンではない姿勢で愉しませて考えさせてくれた大林監督、異人となっても映画を。

—— 追記

映画はどうやって撮られるかという作品は多いけれども、どうやって映写技師により上映されるかという部分を描いた作品はそれほどない。IMAXだとか4DXだとかいうテクノロジー面からいきなり入る世代の観客を動員する作品に殆ど魅力を感じず父の8mmで遊んだ私にとって、フィルムを切って繋げていく技の部分なんてワクワク。

『私を忘れないで』の『私』はあの子や歴史上のことだけじゃなく、かつて映画はこうやって創られたし上映されたんだよという部分も含んでいる。
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