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世界の終わりにはあまり期待しないでのYouKeyのレビュー・感想・評価

4.8
 「アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ」のラドゥ・ジューデ監督最新作!まさしく鬼才と呼ぶにふさわしい。今作も気持ちいいくらい安定した『そこ、笑うところ?』のフルスイング連続で笑った笑った。

 ビバリーヒルズの一角にあるL.A.の岩波ホールことリュミエール・シネマ(ミュージック・ホール)で観賞。日本は北九州国際映画祭で限定上映されたのみで東京をかすりもしなかったので、以前から行きたかった劇場だったこともあって宿泊先にチェックイン後一休みして駆けつけた。ビバリーヒルズにあるといっても瀟洒な劇場でなくIMAXもなにも凝っていないし車椅子スペースもないが、欧州やジブリに新海以外のアニメーション作品(あ、今「君たちはどう生きるか」上映中)や欧州の作品を西海岸でいちはやくかける故にコロナ禍でロックダウンの憂き目に遭ってからまだリカバリーの最中ならサポートせねばならない。

 で本作は日本でもVPN不要、日本発行のクレジットカードで支払い可能なMUBIで配信開始したので英語字幕で事足りるなら観てほしいのだが、物事を上澄みだけ掬い表層的にしかとらえない脊髄反射が得意な向きは激昂するんだろうな〜(笑)ざっくり二話構成で最初は女性タクシー運転手の話、次は労災の話。かつて独裁者がいた東欧の国らしい皮肉とアイロニーをこれでもかと盛り込み反復させ、さらに一昨年2月末から続く某国の武力侵略についても当然のごとく触れ、フィンランドのアキ・カウリスマキ監督とは正反対の悪露趣味にも近い図太さで切り込んでゆく。

 ルーマニア語に英語字幕で観客は10人いたかいないかだったのだが、さすがに笑うべきところで笑っていたのは新鮮だった。ルーマニア系なのか欧州系なのか?最後に与謝蕪村、一茶、芭蕉の句が出てきてたまげた。ジューデ監督も日本文化に傾倒しているのだろうか?

※ この劇場では「夏へのトンネル、さよならの出口」を上映しました。
※ 「TAR / ター」に出たニーナ・ホス出演。
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