“アメリカ人になれたことが如何に幸せか”
価値観を試される作品。
文武両道の模範的な優等生ルース。アフリカ、エリトリアで少年兵として育ったが、アメリカの里親に引き取られ、激烈なトラウマを克服してきた。
アメリカン・ドリームを体現する存在として持て囃されているが、ある課題をキッカケに疑念を持った教師と対立していく…
「WAVES」も主演していたケルビン・ハリソン・ジュニアがとにかく素晴らしい。オバマを参考に役づくりしたと言うが、善と悪、強さと弱さの狭間を見事に演じきってる。オクタヴィア・スペンサー、ナオミ・ワッツ、ティム・ロスの助演陣もさすが。「クローバーフィールド パラドックス」のジュリアス・オナー監督。J・C・リーによる戯曲が原作。
ひとときも撓むことなく、じわじわと締め付けられるようなサスペンス感。
善か悪か、白か黒か、という二元論では到底割り切れない深い深い闇。社会が押し込める箱の中に注ぐ細い光は、ヒーローを讃えるスポットライトか、罪人を探し出すサーチライトか。
最近の若者が上司や先生に”人前で褒めないで欲しい”と言うのも、こう言うことかも。
アイデンティティとステレオタイプ。
たまたま特権を得られただけ。両親の自己満足。誰も本当は信じてくれない。模範的でないと一気に差別される側に落とし込まれる恐怖…リスペクタビリティ・ポリティクス。演技が上手かっただけ。
Luce=光
エリトリアには姓という概念がないとのこと。
本当の名前すら奪われ、両親や教師、学校が悪気なく、執拗に押しつけてきた理想像。教師の言葉通り、そこでもがいているのは彼だけじゃないのだけど、満たされぬ自らの心に苦しみ続けるのは無限地獄に近い。
ただ、十分過ぎるほどよく出来た里親なんだけどね…偽善なのか?無駄なのか?
実は空虚で偽りに満ちた名スピーチ。
逃れられないラストシーン。
過剰な説明を廃し、謎解きもせず、観客に判断を委ねた潔さも良し。(ただし邦題は意味変わっちゃうのでアウト)
監督インタビュー:
https://realsound.jp/movie/2020/06/post-563426.html