りょう

hisのりょうのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
3.2
 唐突に「子どもは男女のカップルが養育するのがいい」みたいなことを言う家庭裁判所の調停委員が登場して絶句しました。さすがにここまであからさまだとリアリティがありませんが、逆に田舎のコミュニティが同性カップルに寛容だったところが好印象でした。
 男性カップルをめぐる差別や偏見に遭遇しながら、井川迅と日比野渚がそれぞれの心情で葛藤する…みたいな物語を期待していたので、少し肩透かしをくらった印象です。物語のテーマや登場人物の設定は興味深いものでしたが、“同性カップルの子育て”というテーマをもっと強調すればよかったのかもしれません。
 岐阜県白川町を舞台にした物語と東京を舞台にした離婚裁判のシーンの雰囲気がバラバラで、物語の一体性を感じられず、不自然にテンポが途切れてしまうところが気がかりでした。裁判所や弁護士などが登場するシーンが妙に無機質で、テレビの2時間ドラマのような映像です。
 娘の空ちゃんを演じた子役さんの印象が強烈で、全編にわたって映像を支配しています。何なら物語もかなり牽引していて、その本質的なセリフも彼女が言ってしまいます。とりわけ離婚の当事者である両親がとことん自分勝手であるにもかかわらず、それを子どもが間接的に諫めるような展開は、ちょっとやり過ぎだったと思います。
 何をするでもないのに、ちょくちょく登場する柴犬がめちゃくちゃ可愛いので、いい演技をしていたはずの宮沢氷魚さんや藤原季節さんの印象が薄れてしまいました。
 なかなか期待できる要素があっただけに、それを脚本や演出にうまく反映できなかったようで残念です。
りょう

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