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hisのトレバーのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
4.5
filmarks試写会にて。

「幸せになりたいっすねー」、
今泉力哉監督の名を轟かせた快作
「愛がなんだ」の登場人物、なかはらっちの名台詞ですが、
本作は登場人物に、どうか幸せになって!
と願わずにいられないものになっていました。

同棲していた渚に突然別れを切り出された迅。
それから8年。30歳になっていた。
迅は、岐阜の田舎町で野菜を作ったり
自給自足の生活をひっそりとしていた。
そこに、渚が訪ねてきた。
幼稚園児の娘を連れて。
8年の間に、異性と結婚をして子供を育てていた。
仕事ばかりの妻とうまく行かなくなり、
離婚協議中だという。

同棲していた頃と変わらずに接しようとしてくる渚。
昔と変わらない渚と、可愛い無邪気な娘と過ごしながらも
心中複雑な迅。別れてからもずっと引きずっていたから。
少しずつ田舎町の優しい人達に癒されつつあった。
自分の事情は言う訳もなく。
そんな迅に、密かに想いを寄せる人も。

別れてから8年、迅も渚もそれぞれ苦しんできた。
居場所が無い、自分はおかしいのか、、、
ゲイ、である事を自覚してからずっと。
迅も渚も、またその立ちはだかる壁に苦しむ事になる。

どうか、彼らが救われますように、と
願ってしまうほどに今泉監督は登場人物を
丹念に描かれています。
上映後のトークに登壇された時おっしゃっていたのが
演出外の演技も採用しているとの事で、
編集の際に監督が取捨されているので
そのセンスにより登場人物がより魅力的に
見えているんだと思います。

内向的だけど、穏やかな迅。
自分勝手に行動するけど、どこか人たらしな渚。
無邪気で可愛く、時に鋭い事を言いドキッとさせる娘。
仕事に打ち込み、娘を愛しているけど両立に苦悩する
どうしても渚を許す事が出来ない妻。
ひとりひとりへの監督の優しい視点が伝わるようです。
「愛がなんだ」も、たぶんそうだったとは思うんですが
あちらは身につまされすぎてシンドイ、、。

本作はいわゆる敵、悪がいないんです。
それぞれにそれぞれの事情を抱えているんです。
LGBTQ、シングルマザーの大変さ、
現代社会において生きづらさを感じる諸々への
ひとつの答えが希望を込めて綴られます。
それまでは時として見ているのが辛いほど悩み、苦しみます。

話題になった映画「楽園」では、共同体や
村社会の恐ろしさや愚かさが描かれていましたが
本作においての田舎町の人々は、若者や外から来る者を受け入れます。
どちらも、今の日本を描いていると思います。
そして、
優しくありたい、寄り添っていきたいと
強く思いました。
1月公開時には、是非ご覧頂きたいです。

#映画his
@his_movie
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