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シン・ウルトラマンのYKのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

オリジナルを再現したタイトルシーンや、高速テロップ入りプロローグ。冒頭から、遊び心とサービス精神満載でファンムービーとしてはおもしろげだ。しかし禍特対のパートに入ると、映画としての粗が目立ちはじめる。撮影と編集がうまく機能していた『シン・ゴジラ』と比較して、本作は意図のよくわからないカットが多い。シン・ゴジラとは違う映画なんだと主張する一方、それっぽいアングルやテンポ感を踏襲しているところが、全体の印象をバラつかせている要因のような気がする。iPhoneで撮ったというカットも、映像の流れの中ではノイズであったと思う。

笑いの要素にも疑問がある。シン・ゴジラでの笑いは、どちらかというとオフビートな笑いだった。閣僚たちの滑稽なセリフも、いたって真面目に演じ、いたって真面目に撮っているから可笑しいという感じ。ウルトラマンでは、クサいセリフとクサい演出で「ここが笑いポイントだ!」という雰囲気だったのが、民放のドラマのような空気感があって冷めた。一方、観客の笑い声が立っていた長澤まさみの巨大化シーンでは、彼女を浅見弘子というキャラクターではなく「長澤まさみ」としてしか捉えられていない点に、実写とアニメの違いを感じてしまった。そこにはギャグっぽさしかなく、彼女の存在感の怖さや奇妙さといったものが伝わらない気がした。※『パプリカ』でのキャラの巨大化のようにならない。

あえてもう1つ違いを言えば、民間人の描き方が異なっている。シン・ゴジラでの民間人はあくまでモブであり、ほとんど特撮シーンでの記号的な存在(コミカルっぽさorニュース映像のような乾いた視点)だった。シン・ウルトラマンでは、時々入る庶民カットが妙に生っぽく情感がある。それは、ウルトラマンが人間・地球を好きになるという観点から見れば納得できるが、本作における、ある意味漫画的なセリフや演技とのズレはないだろうか。
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