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シン・ウルトラマンのikarushのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.7
前見たシン・ゴジラ(以下シンゴジ、自己評価4.5点)が非常に良かったのと、幼少期に昭和のウルトラマン(マン・セブン・新マン・エース・タロウ)を一通り見ているので見に行ってきました。

個人的な感想云々の前に、当作品は「庵野秀明の色眼鏡(フィルター)を通して表現された、(初代)ウルトラマンの総集編」的な映画になってます。
そのため(初代)ウルトラマンを一通り見ている方にとっては起承転結分かりやすい構成だと感じた一方、ウルトラマンを概念的に捉えている人(ウルトラマン=怪獣倒して人類ハッピーみたいな)にとっては、よく分からない印象になるのかな?とも思います。

まずストーリーと全体的な構成については、凶暴な怪獣や知能の高い外星人(いわゆる宇宙人)などの特色を見せながら、ウルトラマンの立ち位置などもしっかり表明しつつ、また(初代ウルトラマン)へのリスペクトも随所に見られる内容でとても良かったです。
怪獣や外星人については一部で本来と違う設定や別作品(ウルトラQ)からの登場もあるりますが、概ね理解できるかなと。
演者の演出について、ウルトラマンを初見で見る人への配慮からかコメディタッチの若干ベタ過ぎる感じもありますが、変に誇張されてないのでそこまで気にならないかなと。

とは言え緊迫感が終始あるわけではないため、シンゴジに比べると作品自体の面白味には欠ける気がしました。
特にシンゴジでは様々な怪獣が出てきて、それへの対処に悪戦苦闘する様子が一貫して描かれてるのに対し、当シン・ウルトラマンは怪獣登場してやっつけた→怪獣登場したけどなんとかなった→怪獣登場して人類が欺かれた→怪獣登場して…というように、小さな物語の連続的な構成になってるので、ウルトラマン自体に感情移入できないと結果「ふ~~ん」で終わりかなと。

さらにはウルトラマンや外星人のそれぞれの立場と、政治・国勢に通じる細かい譲歩などの演出があからさまに語られるので、政治に興味関心のない人にとっては意味不明でつまらないものと感じるのではないかと。
よって個人的には評価出来るけど、全てを破壊するシンゴジの脅威と比較すると、あんまり万人ウケする作品ではないかなというのが正直な感想です。(ドンパチシーンやバトルシーンもそれほど多くないし)

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追伸(一部ネタバレあり):
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・タイトルバック、ザラブ星人/メフィラス星人の違いと演出、ゼットン戦後のゾフィーとの会話など、随所において(初代)ウルトラマンへの強いリスペクトが感じられて良かった
・シンゴジでの会話は数学や物理などの専門的なワードが多くて理解が難しかったが、シン・ウルトラマンでは政治的なワードが多く(個人的には)ほぼほぼ理解できた
・綾瀬“巨人”はるかの演出は、ウルトラマンやウルトラQからするとそこまで違和感なかったのでネタ的には感じず
・逆に「におい」についてはネタ的な様相が強く微妙に感じた
・一緒に見に行った友人が最後ボロ泣きしていて、(その理由が)「だってウルトラマンによって地球が救われたんですよ!」と熱く語っていたが、こういう騎士道精神を高く評価する人間がブラック企業に良いように使われて、最終的に心を病むんだろうなぁと強く思った
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