この映画はフィクションですが、監督のサム・メンデスが祖父から聞いた戦争体験を基に作られたそうです。
1917年、第一次世界大戦下の西部戦線ではドイツ軍が後退をしますが、それは連合国軍を誘引しようとした戦略的なものでした。翌朝に突撃予定の連隊にそのことを伝え作戦中止の命令を届けなければ1600人もの命が危険にさらされます。
通信手段が断たれた状況の中、トムとウィルの若い兵士二人が攻撃中止を伝える任務を託される、というストーリーです。
緊迫感がすごくて、まるで自分も彼らと一緒に行動を共にしているような気持ちになるなと思ったら、全編ワンカットで撮影されたとのこと。正確には複数回の長回しによって撮影された映像をワンカットに見えるように繋げたものらしいです。
どんな戦争映画でも思うことですが、この映画からも戦争の虚しさ、彼らの悔しさなどが痛いほど伝わってきて、見ていて辛くなりました。
どこに敵が潜むかわからない戦場を進んでいくのは、どれほど怖かったことでしょうか。できれば断りたかったでしょう。こんな任務投げ出したかったでしょう。そして家に帰って家族に会いたかったでしょう。
なぜ彼らは命をかけてまでこんなことをしなければならないのか。命を懸けた戦争に勝ったとして、何を得られるのか。
名誉?勲章?そんなもの、命より重いはずがないのに。
この映画鑑賞中、ずっとこのような考えが頭をぐるぐる渦巻いていました。
名誉や勲章などという抽象的でなんとなく響きのいい言葉で重要なことをうやむやにして、人々の命を粗末に扱う上層部の人々に怒りが湧いてきました。
重要な伝達があるなら自分で行け!
そもそも戦争なんて誰が始めようって言いだすんだろう。それは国のトップの人でしょうが、戦争をしたいならまずその人が前線へ行って戦うべき。それができないなら、戦争なんて起こすべきではない。もちろん、もしもできたとしても戦争は起こすべきではありません。
どんな戦争映画を観ても「どうして戦争なんて起こすんだろう」という虚しさを感じますが、この映画は特にこのような気持ちを強く持ちました。
ストーリーはシンプルですが、力強い反戦のメッセージを感じました。