リョウ

1917 命をかけた伝令のリョウのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.8
個人的にはパラサイトやミッドサマーを超えて、最近見た中で一番面白かった映画。
悲惨な塹壕、死傷者、血、銃弾、爆発、廃墟、泥水、瓦礫、野原、草、花、木、桜、牛、青空、飛行機、敵兵、友軍、上官、作戦室、森、濁流、歌、その他諸々全てがシームレスに繋がって、惨たらしい有様も牧歌的な風景も、何もかもが地続きなのだと感覚される。
ただ伝令兵が戦場を駆けていくだけの映画だが、そこに戦争という事態の見方を変える示唆がある。
全ては繋がっていて途切れない。終わらないのだ。この惨状、戦争は。
命がけで、友を亡くしてまで伝えたその伝令はただその場の攻撃を止めるだけであり、また翌日には次の命令が言い渡される。少なくとも1年、1918年11月11日を迎えるその時までこの戦争は続く。そして例えこの戦争が終わっても、数年後には次の戦争が待っている。その次にはまた次の……
結局、彼は何をして、何を失って、何を得たのだろう。

出来事は、それ自体では一時的で、始点と終点を備えるものに見える。しかし、実際は縫い目などなく、幾つもの結目を持つ一本の糸の、その結目でしかない。

そんなことに想いを馳せて、映画の余韻に浸っている。
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