リョウ

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のリョウのレビュー・感想・評価

4.9
三島由紀夫と東大全共闘との討論会を記録したビデオを軸にして構成されたドキュメンタリー。
個人的にはとても興味深く、考えさせられるものであった。
この討論会の本質は、保守と革新、右派と左派の単純な対立ではなく、より哲学的に、人間が社会とどう関わるのか、「言葉」というものの核心に迫るところにあると思う。
結局、彼らは対立しているようでしてはいない。脆弱で、あやふやで、猥褻な国家という共通の敵を持ち、それに対するアプローチが異なっただけだ。
三島の行動は、第二次世界大戦末期に思春期を過ごし、自分だけ生きている、「生き延びてしまった」という無念を抱え、それがアメリカの族国に成り下がった日本への焦燥感という形で現れたものである。一方で、全共闘は陳腐化した大学のあり方、体制と権力への嫌悪、知性への懐疑に若者特有の熱情が重ね合わさる形で生まれた。
違いは、「天皇」という差分でしか現れていない。

彼らのこの、熱情・敬意・言葉は、現代をのうのうと生きる自分にとって、その源泉すら想像し得ないものになってしまった。個人中心の社会において、「行動する」ということを欠いてしまった人間は、どう生きれば良いのか。自分はどこにいるのか、そこが揺らがされた気分だ。

三島由紀夫は、2020年の日本をどう見、どう語るのか。それに想いを馳せたい。
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