LEONkei

1917 命をかけた伝令のLEONkeiのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.8
〝明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは〟

今まさに目の前に美しく咲きほこる桜も、明日必ず見れるとは限らない。
夜半の嵐によって全てを散らせることもある。


戦争と言う非現実的な現実世界に放り込まれた若き兵士は、極限までに追いつめられ精神崩壊をし非常識が常識となる世界に何を考えるのか。

全編ワンカット(実際は複数の長回しカットを繋ぎ合わせワンカットに見せる手法)は場合によってはダラける事もあるが、この作品はそれを感じさせない物語の構成と素晴らしいカメラワークにある。

撮影監督〝ロジャー・ディーキンス〟の作り出す、緊迫感ある生々しいリアルな映像に圧倒される。

A地点からB地点へ伝令を運ぶ単純明快・シンプルな物語も、映画が娯楽としての原点を感じる。

そのシンプルさは伝令を運ぶ以前に若き兵士の何故戦うのか、何故走るのか、何故生きたいのか…劇中の伝令を届ける若き兵士の姿を観ていくうちに、観客側には〝何故〟の真の意味を伝令として受け取ったに違いない。


桜は今年もきっと満開となるだろう…と咲く事を前提と考えがちだが、それは違う。

潔く散った同期の桜は、帰って来ない。

派手さはないが良く出来た一瞬を駆け抜ける素晴らしい作品..★,
LEONkei

LEONkei