Chico

おもかげのChicoのネタバレレビュー・内容・結末

おもかげ(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

柔らかな雰囲気のジャケとタイトルからイメージしていたものとはずいぶん違った。というかラスト10分で印象がガラリと変わった。

元夫との間にもうけた6歳の息子を亡くしたエレナ。10年後、ビーチで息子そっくりの少年と出会う。喪失の悲しみから立ち直ることができないエレナはその少年に息子のおもかげを重ねる。少年もまたエレナに好意を持ち、二人の交流が始まる。しかしその交流は次第に現恋人や少年の家族など周囲の人達を混乱させていく。

初めから終わりまで暗くて苦しい。辛い過去から立ち直る話なのかと思ってたがそこまでは描かれていない。

最初の15分はサスペンス要素があって引き込まれる(心臓に悪いけど)。そして広角レンズで撮られた画は息苦しくて、エレナの心理状態を表現する演出として効いている。心理描写は繊細で物語も丁寧に進む。主人公はかなり自己中だけど息子のことを思うあまり、と同情して観ていた。
だけどラスト10分で拍子抜けした。最後の最後、息子の夢を見て、少年を助けに行ったはずじゃなかったのか。二人のラブシーンが唐突過ぎて全く理解できなかった。

子供の存在が物語の都合で感傷のアイテムにされているように感じてしまったし、その他色々と気になることもある。彼女が町の人に〈変人〉と呼ばれているのが何故なのか(息子を殺害された被害者を何故変人呼ばわりするのか)、彼女の元夫への怒りがすごくヒステリックなのにラストで平然と電話かけてるのは何故なのか。
彼女は結局何がしたかったんだろう。
どうしたいんだ、と尋ねる(彼女の)恋人の言葉に共感する。

彼女が救われる日が近いことをほのめかすラストなんだろうけど、自分には、彼女がおもかげから解放されず、それが呪縛となり本当に〈変人〉になってしまったように見えた。
Chico

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