このレビューはネタバレを含みます
『炎628』的な戦争映画と思いきや、流浪する主人公の身に降りかかる困難をユダヤ人の苦難の歴史と重ねる、神話的宗教的な意味合いの強い作品だった。
善と悪、生と性は隣り合わせ。
一人の中に容易に共存する。
彼への迫害の理不尽さ、地獄めぐりの様子を描くだけではなく、そこからの更なる踏み込みには驚いた。
愛玩動物を殺され涙した無垢な少年は、やがて力と知恵を身につけ迫害者への反撃に手を染める。
また中盤、主人公と女性の関係性(寂しさや代用や当て付けといったもの)は、エヴァ旧劇のシンジとアスカに重なった。
市井の人々や野生動物であっても、人種/民族/男女/マイノリティ/貧困/弱者/異分子といった差別の理由はいくらでも捻り出してくるし、それを正当化した時の醜悪さには目を当てることも出来ない。