たく

異端の鳥のたくのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.0
前情報無しに観たので少年が何でこんなひどい扱いを受けるのか途中まで分からなかったけど、ホロコーストを逃れたユダヤ人少年が行く先々で迫害されていく話で、ポーランド作家イェジー・コシンスキーの発禁書が原作なんだね。全編にわたって人間が持つ理不尽で残酷な本質を少年の一人称の目で淡々と描いていくところに不思議な魅力があり、セリフを極力抑えたサイレント映画っぽい映像をちゃんと目で見て分かるように演出してたのが良かった。

全体が9つの章で構成されてて、それぞれ登場人物の名前が付いてるんだけど、肝心の主役の名前が最後まで不明。これがラストに繋がるところがジーンと来たね。
原題"The Painted Bird"は、ペンキを塗られて群れに放たれた鳥が仲間から異端として迫害される様子を少年に重ねてる。前半で動物たちを自分と同じ弱い存在として共感を示してた少年が、「ラビーナ」の章でヤギに対する憎しみに変わるところがターニングポイントになってる感じで、全編にわたる残酷描写に目を奪われがちだけど、少年がいったん死んだ心を最後に取り戻すというある種の成長物語になってたね。

最初の方で少年が老婆から「靴はちゃんと磨きなさい」って注意されるのが、後にドイツ兵やソ連兵の靴を磨く伏線になってるのが上手かった。
数々の動物達の演技(?)が秀逸で、顔だけ出して土に埋められる「戦メリ」みたいなシーンでのカラスの襲撃が衝撃的だし、原題になってる鳥の群れもすごい迫力。生々しい猫の交尾の場面とかどうやって演出したんだろう?(チュールを塗りつけたのかな?)
たく

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