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異端の鳥のyahのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.5
 ホロコーストによって疎開させられた少年の話だが、ただ戦争の恐ろしさを知る作品でないところに痺れた。3時間弱の長編だが、時間を感じさせない各パートでの展開は少々残酷であるが、これらの積み重ねで少年は変化していったのだと素直に飲み込めた。少年の境遇は誰もが目を覆いたくなるほどのものだが、少年が人や動物を殺めてしまうのも、周りの大人のせいなのがよく分かる。子どもは大人の言動をみて学び、欲にまみれ利己的な大人たちしかいない環境で、善悪を学ぶことなど少年には不可能だった。無垢な少年が悪に変化していく姿には共感できないが、誰も責められない。この救いようのない物語の中でも、スカルスガルドやバリー•ペッパーの登場パートやラストには助けられた。

 全編モノクロであるからこそ、不要なものを映像から排除でき、より登場人物にフォーカスすることができた。セリフも最小限であり、徐々に変化していく少年の表情、目力、態度がさらに際立っていた。
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