「本を売るために映画を製作する」
日本におけるメディアミックスの先駆者たる角川春樹による“最後”の監督作品。
“最後”とだけあって、往年の角川映画スターキャストが多数出演しており、オールドファンは二度美味しい。
おしとやかな時代劇のようだが、扱うテーマは、“被災が与える社会的弱者への影響”、“異文化との調和”、“シスターフッド”であり、きわめて現代的だ。
全編にわたって、原作では“物語の見せどころ”とされているであろうシークエンスを抽出され、ていねいに世界が描かれる。
“食”はていねいであるべきで、演出は主題に通じているのではないだろうか。
鑑賞後、「原作も読みたい」と思わされる作品だった。令和においても、“角川映画”は健在である。