アキラナウェイ

一人っ子の国のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

一人っ子の国(2019年製作の映画)
3.8
外国で飛行機が墜ちました
ニュースキャスターは嬉しそうに
「乗客に日本人はいませんでした」
「いませんでした」
「いませんでした」
僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう

〜THE YELLOW MONKEY "JAM"より〜

ふと思い出したのがこの歌詞。
日本で起きた事じゃないから、
僕らは知らんぷりしてもいいんだろうか。

一人っ子政策:中国において1979年から2015年まで導入された厳格な人口削減策、計画生育政策。

中国人映画監督のナンフー・ワン。彼女の名前ナンフーは、「男」と「柱」という字から成る。一家の大黒柱として男児の出生を願った家族が命名した名前である。中国からアメリカに移住し、そこで男児を出産したことを機に、「一人っ子政策』に興味を持ち、母国中国で行われてきた非人道的な政策の裏側を捉える。

衝撃が走る。
こんな事が許されていいのか。

人口を減らさなければ国が滅びる。

捨てられた命
殺された命
売られた命
生まれないようにされた命

男性が家名を継ぐ為、望まれぬ女児が生まれたら、道に捨てられる。ゴミの山の中でビニール袋に包まれて捨てられている胎児の遺体が目に飛び込んでくる。現在84歳の元助産師の女性は、5万〜6万人の胎児の命を奪ったと告白する。捨てられた赤ん坊を国外へ売る人身売買ビジネス。本当は捨てられていたのに、孤児だと偽られる子ども達。縛りつけられ、強制的に堕胎手術や不妊手術の餌食となる女性達。

それでも、「仕方がなかった」と繰り返す人々。
当時の政策は厳しかった。政策は絶対だった。
だから、「仕方がなかった」。

そりゃないよ。
国が自国の命を奪うなんて。

遣る瀬無くて「仕方がない」。

プロパガンダにより洗脳された国民は、愛国心が強い程に、その心が歪んでいく。現代の中国における人口バランスにも大きな歪みが生じる。日本と同じく、高齢化社会に喘ぐ中国が今打ち出しているのは「二人っ子政策」。

その二枚舌に思わず絶句する。

僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう

一先ず、この映画を観た事を伝えよう。
そして、話し合おう。

これは中国が悪だとか、関わった人達が悪だとか、そんな問題じゃない。僕らが彼らの立場に立っていてもおかしくないし、僕らがビニール袋に包まれて捨てられていてもおかしくないって事なんだ。

生まれる国は選べないのだから。