SatoshiFujiwara

WASP ネットワークのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

WASP ネットワーク(2019年製作の映画)
3.7
TIFF2019

『カルロス』に続いて割と短期間にテロ(テロリスト)を作品の題材にした辺りアサイヤスの何らかのこだわりがあるのだろうけど(いや、単にネタ的にイケるからか)、それはともかくこれは面白い。但し、突っ込んだキューバの情勢や貧困、精神性を表すまでには至らず、その辺はトマス・グティエレス・アレアの『低開発の記憶』やレイナルド・アレナスの諸作品に触れることで補完されるかも(勝手な見立てだが)。

本作、異なる時間軸と場所を自在に交差させて映画的感興をバシバシ盛り上げながらもやり過ぎず、語り口ものめり込みすぎずに対象をフラットに切り取りシンプル、虚飾がない。ナレーション付きの組織の紹介場面なんかちょっとコメディックでもあり、この辺りもアサイヤス的。「1990年代にフロリダを拠点とする反カストロ派のテロ組織がキューバに攻撃を仕掛け、キューバ政府の指令をうけたキューバ人スパイたち《Wasp Network》がテロ組織に潜入し、アメリカ政府に逮捕された実話を描く。」(映画.comからのコピペ)。

思うんだが、キューバとマイアミなんて地図で見ると目と鼻の先で、それは作品冒頭でキューバからマイアミまで泳いで亡命するという描写に表されているけれど、しかしこの2国は距離は近いがその内実はまるでかけ離れていて正反対で(これもキューバにおける労働環境の描写やそれぞれの町並みで否応なく画面に定着している)、その辺りがまんま映画的だ。また「永久革命」なんて言葉があるが、レネとその妻オルガ(ペネロペ・クルス!)の間の娘を対象にして時間の経過を否応なく印象付ける辺りも良い。子供の成長は早いから。

本作もまたちょっと前に観た(レビューも上げました)『戦争のさなかに』でのスペイン現代史同様、キューバ革命における同国内政とアメリカとの長年の確執、フィデル・カストロについての知識があればより楽しめるんではないかと。

一般公開されんのかいな(てかTIFFは一般公開微妙なのを観に行ってるんだけど)。
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