東京国際映画祭クロージング作品、コロナによる延期で待ちに待ってた『HOKUSAI 』を鑑賞。
若い頃の北斎を柳楽優弥、晩年の北斎を田中泯、このキャスティングだけで発表からずっとワクワクしてた。
前半、柳楽優弥演じる北斎は、まだ勝川春朗を名乗ってたほぼ無名の時代。蔦屋は阿部寛、玉木宏の歌麿は真赤な着物で廓暮らし。それも蜷川実花か(?)ってくらいの派手〜なビジュアルの部屋だったり、かなり歌舞いた感じ。また同時代の謎の絵師「写楽」も登場し、駆け出しの北斎はライバルとのチカラの差に悔しい思いをしながら旅に出る。
その旅の途中で、あの「波」の「赤富士」の着想を得たであろうシーンに、北斎ファンは熱くなる。(ただし、その度に絵が出るわけではないので、あまり北斎を知らない人には難しいかも)
後半は一気に数十年飛んで、田中泯演じる晩年の北斎。町をつむじ風が襲った時、突然クロッキーのように人々の姿を書き留める。「北斎漫画」の誕生だ。
ただ後半は、幕府による戯作者への締め付けが厳しくなる中、北斎が挿絵を描いていた柳亭種彦がそのターゲットとなり、権力者に抗う葛飾北斎が描かれる。取り憑かれたように「生首の図」を描く田中泯北斎の鬼気迫る迫力は他の役者では叶うまい。
舞台挨拶に立った田中泯さんは「いいかげんな感動はいらない」と語り、ともかく演じたままを感じてほしいと言っていたが、まさに田中泯、一世一代の名演だろう。
欲を言えば、馬琴や山東京伝も出してほしかったとか、晩年お栄がほとんど描かれてないなぁとか、言い出したらキリがないんだけど、北斎ファン納得の素晴らしい作品だった。
一般公開は2021年5月! まだ半年も先だ。今日見られて幸せだった! そして、2020年の東京国際映画祭もこの作品でフィナーレ。また来年!