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歌うつぐみがおりましたのsonozyのレビュー・感想・評価

歌うつぐみがおりました(1970年製作の映画)
4.0
こちらもオタール・イオセリアーニ監督作。
グルジアの首都トビリシの街が舞台。
オペラ座の交響楽団でティンパニー奏者をしているギア(ゲラ・カンデラキ)の物語。

両親と小さなアパートに暮らすギアは、“気が多い”男選手権があればNo.1間違いなし。笑

演奏会では毎度の遅刻で、ティンパニーを叩くギリギリに走り込んでニンマリ。
街を歩けば、様々な知人の女性に声かけたり、電話かけたり、男友達と遊んだり、すぐ戻ると客を待たせたまま戻ってこなかったり、約束を忘れたりすっぽかしたり、謝ったり。
図書館でどっさり資料借りても周囲の女性をチラ見したり、街で人だかりがしていれば野次馬に参加したり。

楽団のディレクターは、遅刻の常習犯ぶりにさすがに我慢の限界で、話をするために事務所に呼ばれたギアは5分待ってろと言われたのに、じっとしてられず、また別のことをしちゃう・・・

知人たちも呆れたり怒ったりしているものの、どこか憎めないキャラ。愛されキャラというほどではないですが。笑

近所の子どもたちが部屋の窓から覗いて音楽聴かせて〜と言えば、大きなオルゴールを手回ししたり。
頼まれていた本を渡したり。
友人を医者に連れて行ってやったり。
母から頼まれた叔母の誕生日にも遅れながら参加して叔母の歌に合わせてピアノを伴奏したり。
友人たちがコーラスをしていると、歌ってアドバイスしたり。と、心優しき男でもある。

英題は「Once Upon a Time There Was a Singing Blackbird」
ビートルズの曲でも有名な「Blackbird」ですが、ツグミ科のクロウタドリのことで、地上で虫や木の実などをついばみ、その美声が有名らしい。
ということで、このジャケ写の女性がつぐみちゃんなのかな?と思いきや、左の男ギアが“Singing Blackbird(歌うつぐみ)”なのでした。

集中力ゼロ、注意力散漫、好奇心旺盛な子供がそのまま大きくなっちゃった感じのギア。
確かに人に迷惑をかけてる面もあるものの、実はそれぞれなんとかなってるし、人をつなぎ、人に優しい。
こんな人がいてもいいと受け入れるのがまさに多様性社会ですね。

時計の修理屋にフルートが壊れた友人を連れて行き、雑談しながら突然金属板を万力にはさんでヤスリをかけたと思ったら、壁に打ち付けて職人の帽子掛を作ってあげてたというシーンが、観た後によみがえり、なんとも切なくなる読後感でした。
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