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娘は戦場で生まれたのたのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.0
ずっと見たかったものの一つ。
たまたま付けたNHKのEテレで鑑賞。


『今日は空爆の音が少ないわね』

こう、赤ん坊のサマに話しかけているアレッポという世界。だけどなんだか簡単には受け入れることのできない自分がいる。


戦場で起こる死の現場と生の現場。

徐々に侵攻され、崩壊してゆく建物や人を描いているのにこの作品には病院のシーンが多いからこそ、2つの現場がより鮮明に見える気がした。


大義のために、犠牲のために戦い続けた一家の物語。今でも内戦が続くシリアが同じ地球の中にある。目の前の自分の世界を見ることは当たり前だが、直接触れたこともない、直接見たことのない知らない世界をいざ見せられると、やはり自分はちっぽけな存在で、何にもできていないと感じる。
特に、この『娘は戦場で生まれた』を見たあとはもどかしい気持ちになったと同時に胸が強く締め付けられる気がした。
あまりにも想像を絶する世界に見えたからかもしれない。

危険と隣り合わせの戦場に残ることが正しいこと(すなわち、犠牲者のために、力を尽くしてきた人のために)から、戦場となった古郷を離れて平和で未来のある場所に移動することが正しいこと(正しい、では語弊があるかもしれないが、すなわち子どもや未来のため)に変化してゆく最後の選択を迫られた病院の場面では、本当に難しい選択だったのであろうと感じる。

危険と知りながら、そんなことはわかっていながらも、徐に戻ってきた街を、仲間がいた街を離れる決断をしたのだから。

サマちゃんはこれを見てどのようなことを感じるのだろう。
建築家になってアレッポを建て直すと言ったあの少年はどうなったのだろう。
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