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娘は戦場で生まれたのcinchanのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
5.0
シリアの独裁政権に対して,民主主義や自由を勝ち取ろうとする反体制派の人たち.それに対して,容赦無く攻撃をするロシア軍やシリア政権.2012年から2016年というすぐこの前の出来事を,自分は何も知らなすぎた.

劇中では,何度も娘を失い泣き叫ぶ両親や,弟を爆弾で失う兄,子供に子守唄のように爆弾からの身の守り方を教える父といった衝撃的な描写が続く.死が身の回りから遠くなっている現代人の自分にとって,それは痛く,辛い.

しかし,そこに一筋の光がさす.それは,監督のワハドと,反体制で負傷者を救う医師ハムザに,娘が生まれたのだ.監督は何度も戦場でなくなる子供たちと娘を重ねる.

娘が生まれてもなお,一線で戦い続ける人を母は撮り続け,父は救い続ける.彼らの何がそうさせるのか,なぜ彼らは安全なところに逃げず戦い続けるのか.

映画を見終わった後,考えた.今,自分の近くにいる大切な人に何を伝えたいのか,この一瞬を自分は生きることができているのか.そして,彼らの痛みをどうやったら自分の痛みのように感じることができるのか.自分自身に,問題提起を投げかけてくれる素晴らしい映画った.
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