酢

青い沼の女の酢のレビュー・感想・評価

青い沼の女(1986年製作の映画)
3.3
実相寺昭雄は基本的に自分の美学で映画全体を塗り固めたい人。語りはアウトオブ眼中。なので放っておいても物語が推進するジャンル物の強固な枠組みがあると格段に見やすい。熟練の映像テクニックが冴え渡る。歪んだ画面の中に収められた霧立ち込める沼地(セット組んでる!)に妖しげな青い照明が差し込む時、そこには夢幻の世界が立ち現れる。ああうっとり。中山仁に双眼鏡で監視されながら田村亮と山本陽子が散策に出かけるシーンなんか凄かった。台詞上は何も起きていないのに、冥界の狭間にいるみたいな撮影になっている。

美術もカマしてて良いね。朽ち果てた時計、部屋一面の列車模型、謎の座敷牢。どれも大した意味は無い。でも開き直る強さが表現に宿っている。随所に挟まれるしょーもないギャグはご愛嬌。
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